2013年10月9日水曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.35

S部長とスタートした理想のモデル作り。まずとりかかったのはサンプルを作るのでも型紙を前にあーだーこーだ言うのでもなく、当時私が目標にしていたイタリアの某メーカーのジャケットをS部長に普段使いしてもらうところからスタートしました。理由は当時の国内工場で生産されていたジャケットは往々にしてハンガーにかけている時は綺麗に見えるのですが長時間着用していると肩周りが疲れてくる欠点があったからです。ジャケットで重要なのはハンガーにかけている見た目ではなく人間が着用した際に立体的で美しいシルエットが出る事、そして着疲れのしない事。その2点を新モデル開発にあたりS部長と共通の目標にする為にまず目標とする着心地の共有化を図ろうという事になったからでした。

S部長にジャケットを渡して2カ月くらい経ったでしょうか・・・ある日S部長から連絡があり、面白いものを入手したからとの事。聞けばイタリアの高級既製服メーカーが軒並み使用している芯地を探し当て、サンプルが手に入ったので一度見て欲しいという内容でした。
私自身、それまでイタリアのジャケットを分解してはパターンを真似、縫製を真似て何とか同じようなシルエット、着心地のものをと模索していた中で、芯地に関して言うと硬さの違いはあれど、それ自体がさほどジャケットのシルエットや着心地に影響を及ぼすものという認識はありませんでした。なのでS部長から芯地を入手したと言われても「なるほど」、「ふーん」というくらいにしか想わなかった記憶があります・・・

後日、S部長は自慢げに私のところにその芯地を持って来られ、「五十嵐さん、これで作ったらあの着心地になるかも知れません」と切り出したのでした。
「ん?」頭の中では芯地でそんなに変わるもんかなと若干疑問を抱きつつも、失敗続きのモデル作りの旅の道中にひょっこりと現れた目の前にある一見普通にしか見えないその芯地を前に、「もしかすると出来るかもしれませんね、是非お願いします!」と言うしかなかったのでした・・・


                                                             つづく

2013年9月30日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.34

振り返ってみますと前職時代を含めるとオーダーメイドに携わって早18年の月日が経とうとしています。

当時は「KITON」や「ISAIA」、「Belvest」等、いわゆるクラシコイタリアと呼ばれるイタリアのクラシックスーツが本格的に日本に紹介され始めた時期で、その軽い着心地や流れるようなシルエット、細番手の素材使いなどに私自身もすっかり魅了されていました。国内のスーツ工場にイタリアのスーツを持ち込み、バラバラにしてそこからパターンを作ってみたり、イタリアで買ってきた芯地で作らせてみたり・・・試行錯誤の毎日でした。しかし一向にイメージするものは出来ずサンプルチェックと工場周りに時間を費やすばかり。

その間に国内のスーツ工場はどんどん閉鎖され、私が関わっていた工場も残念ながら幾つかは廃業となってしまいました。現場は高齢化がすすみ、稼働率も軒並みダウンし、どちらかと言えば斜陽産業化していたスーツ工場。そんな中、ある人物との出会いによってその後今に続くロゼストのオリジナルオーダーメイドの原型が出来ていきました。

それは関西の某工場で出会ったS部長。第一印象は声の大きいおじさん(笑)。そのS部長、今まで出会った工場の方達と一つだけ大きな違いがありました。当時20代後半だった私がパターン製作の為にある工場の裁断責任者やパターンナーの方々を前に「ここはこんなイメージでこのような見え方」、「ここはもっとヴォリュームを出して欲しい」、「この部分にもっと丸みが欲しい」etc・・・とにかく当時はイタリアのスーツを啓蒙していたので、ダメ出しばっかりしていた訳です。工場の方達の反応は概ね「技術屋でも職人でもない若造が理想ばっかり言っとる」的な捉え方で、うちのラインではこれが限界ですと途中で断られるケースが常でした。

しかしこのS部長、まず違ったのはミーティングの席に工場の若い方を同席させ、皆で私の話を一生懸命聞いてくれ、途中で絶対に口を挟まないという事。普通はラインで流れている工場ですから製作過程の全てに限界値があって、その中で出来ない事はすぐに無理ですって言ってくるものなんですが、
S部長はニコニコしながら若造の理想に耳を傾けてくれました。そして「おもろそうやからやって見ましょう」と言って当時その工場で生産していたパターンや縫製工程と全く違うモデルの開発を引き受けて下さったのでした。

それが2000年前後の事、そこから私とS部長の執念のモデル作りが始まったのでした・・・

                                                             
                                                             つづく

2013年9月23日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.33

オーダーメイドでスーツやジャケットをお作り頂く際に是非ともこだわって頂きたいのが「ボタン」です。

特に色目のあるジャケットの場合はボタンの色や素材によって印象が随分と違って見えるものです。
せっかくこだわって選んだ生地にはこだわりのボタンを付けたいもの!当店では様々な種類のボタンをご用意しております。



素材としてはホーン(水牛の角)・コロッツォ(椰子科の実)・シェル(高瀬貝や蝶貝)の3素材をご用意しております。最近では上記の天然素材に似せたプラスティック製のボタンも氾濫しておりますが、経年変化もなく、耐久性にも劣りますのでロゼストでは取り扱いしておりません。

ではそれぞれの素材の特徴ですが・・・

ホーン
カラーはブラック~グレイ、飴色っぽいものからベージュが一般的です。仕上げによって光沢を出す事もでき、光沢感は使用とともに増していきます。色に関しては経年による変化はほとんど見られません。素材的に重厚感を感じさせる為、一般的にはスーツに使われる事が多いタイプです。ホーンにも様々な形、厚さがありますので素材との相性やお好みによってお選び頂けます。
下記は当店で取り扱いしておりますホーンボタンの一部になります。

ロゼストオリジナルとして別注作成している
ホーンボタンです。周りの盛り上がりが少なく、
底部のふくらみは浅めに仕上げています。
少しモダンな雰囲気の漂うボタンです。













上記と同じくオリジナルです。珍しいホワイトホーン!
コットンやリネンスーツ、ジャケットにマッチします。













中心部は艶消しとし、ボタン周囲だけ光沢仕上げとしたタイプ。底部はフラットに近い仕上げ。
落ち着いた雰囲気でダークスーツにマッチします。













上記と似ていますが、こちらは全面光沢仕上げで中心部が一段下がったデザイン。ダークな色目とホーンならではの飴色がミックスされたクラシックな雰囲気。
ダークスーツはもちろん、ネイビーやブラウン系のジャケットにもおススメです。











こちらもミックスホーンですが、中心部がかなり掘り下げられており、ボタン自体の厚みもかなりのものです。ツイードやカシミア等のボリューム感のある生地との相性が良いボタンです。













綺麗なグレイのボタン。ホーン素材でこのような色目はかなり珍しいのではないでしょうか。
全体的に薄く作られ、底部はほぼフラットです。
ライトグレイのスーツやジャケット、ベージュ系のジャケットのアクセントにも良いかも知れません。














コロッツォ
椰子科の実から作られたボタン。特徴は染色が容易なので、様々なカラーのものがチョイス出来る事。また光沢感も様々で触った時の温かみのある感覚はホーンやシェルでは得られないものです。
難点はものによっては経年変化で変色する恐れがある事。染めているのである程度は仕方ないかも知れませんが気になる方は避けられた方が無難かも知れません。
スーツ、ジャケット問わずお使い頂ける汎用性の高い素材と言えます。


十分な厚みを持ち、底部はかなり膨らみを持たせた形状になっています。伊No.1スーツメーカー、アットリーニが好んで使用するものと同一のクオリティです。













中心部がかなり凹んだ形状の面白いボタンです。サイドの厚みもかなりありますので、カジュアルっぽい素材感のジャケットにマッチします。














中心部はマットな仕上げ、周りのみ光沢感を出した仕上げです。底部はフラットに近く、ボリュームを抑えたデザインになっています。
写真のような綺麗な中間色はコロッツォならではの魅力と言えます。












はっきりとしたエッジがなくヌメッとした仕上げが
面白い。ボタンの厚みも薄めで優しい雰囲気。
ヘビーコットンやコーデュロイ、ツイードなど冬場のウォーミーな素材にマッチします。














シェル
高瀬貝や蝶貝などを使っているため、基本的に天然の光沢があります。カラーも白~グレイ、ベージュ~ブラウンが基本ですが、近年では染色によりダークカラーに仕上げたものも存在します。
その清涼感を感じさせる見た目から春夏のジャケットに使われる事が多い素材です。欠点は割れたり欠けやすい事と、クリーニングの溶剤によっては光沢感がなくなってしまう場合がある事です。


定番的な真っ白のタイプ。
これはやはり夏のコットン、リネン素材が王道ですが、ジャケットだけでなく素材によってはスーツに付けられても良いかと思います。













ホワイトからグレイにかけての天然のグラデーションが美しいタイプ。近頃ロゼストではホワイト一色よりこちらをお選びになられるお客様が多くなっています。





ボタンはジャケットの中で唯一アクセサリー的な要素があるパーツです。
デザインがクラシックなジャケットこそディテールでこだわりを見せたいものです。




2013年9月20日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.32

このブログで当店のオーダーメイドスーツのモデル説明や補正、生地の話をご紹介してまいりましたが、本日は実際にご来店頂き、オーダーを承る際の手順をご紹介させて頂こうと思います。

 まず承りは営業時間内(11:00 ~ 20:00)であれば何時でも可能ですが、生地選びの際に太陽光の元で生地サンプルの色目をご覧頂いた方が出来上がりをイメージして頂きやすいかと思いますので、出来れば昼間のご来店をお勧めしております。
 ご来店時ですが、ジャケットの袖丈、パンツの長さも採寸時にお合わせする為、普段お召しのドレスシャツ、シューズをご持参頂ければ、微妙な長さのお好みにお合わせしやすいかと思います。
(シャツは店舗にサイズサンプルがございますのでそちらをお使い頂く事も可能でございます。)

ご来店頂きましたらまずはソファでゆっくりとお話をお伺いさせて頂く事からスタートします。

・どういうシチュエーションでお召しになられるものをお作りするのか?
・お好みのスタイルはどういう感じか?
・体重の増減はある方かない方か?
・お仕事でお召しになるものであれば、座っている時間が長いかはたまた出張等で動き回る事が多いか?
・ジャケットならお持ちのパンツの傾向はどんな色、素材が多いか?
・おおまかなご予算は?

等々、お伺いさせて頂く事で、私の中で具体的なイメージを作っていきます。形のお好み等は例えば雑誌等の写真をお持ち頂く等していただいても非常に参考になります。
お話をお伺いするお時間ですが、平均すると20~30分程度といったところでしょうか。

 次は生地選びです。お気に召して頂ける生地が見つからないことにはその先に進めませんので
上記でお伺いしたお話を元に、各生地メーカーの膨大な生地サンプルの中より当てはまりそうなクオリティや色柄をある程度選択しながらご覧頂きます。この生地選びは最も楽しくまた時間のかかるパートでもあり、私も約5.000種類の生地サンプルの中からイメージに合いそうなものをピックアップしていく作業は真剣勝負であります。特に生地バンチの小さな生地片でご覧頂いているのと実際の出来上がりでは生地によって見え方が随分と変わってしますものもありますので、その辺りをご説明しながら時間をかけてゆっくりと絞り込んでいきます。
生地選びにかかる時間ですが、これはもうお客様によって様々ですが、平均すると30分 ~ 40分、かなり悩まれた場合は1時間程度でしょうか・・・

生地が無事に決まれば次は採寸となります。
採寸はバスト、ウェスト、ヒップに始まり、計10箇所をメジャーリングし、その数値を基にしてベースサイズを割り出していきます。そして次にお話をお伺いしたイメージを基に当店のモデルの中でイメージに近いものからサイズゲージを順番に羽織って頂き、デザインや着心地のお好み、体型との相性をチェックしていきます。そうして基本となるモデル、サイズを決定していきます。
決定しましたら、サイズゲージをお召し頂いた状態でお客様のお好みやバランスを見ながら各部のサイズをピンを打ちながら調整していき、オーダーシートにお客様のサイズ情報を記入していきます。そして同時に体型のクセに応じて体型補正の補正量もチェックしていきます。
この採寸全般にかかる時間は概ね20~30分程度となります。

ここまで来ましたらもう一息です。採寸後今度はポケットやベント、ステッチなどのデザイン的な部分をお伺いし、ボタンやライニングの素材、色までお好みのものをお選び頂きます。ここは10分程度のお時間があればおおよそ大丈夫です。

そして最後に承りました生地やモデル、デザインなどの最終確認をさせて頂きご注文承りとなります。

そして上記をご覧の通り、約1時間半程度のお時間を見て頂けます様、何卒宜しくお願い申し上げます。

2013年9月17日火曜日

「URU」新作入荷

高度な技術を誇るタンザニアのジュエリー職人が手掛ける「URU」。


当店では上記「Mviringo」と名付けられた、控えめなシルバー彫金のチョーカータイプを取扱しておりましたが、本日より期間限定にてより大ぶりなシルバー彫金にダイアモンドを始め様々な天然石をセッティングしたシリーズが入荷しております。





特に何億年もの歳月をかけ、タンザニアの大地奥深くで形成されたラフダイアモンド、そしてタンザニアでのみ採れる貴重な宝石「タンザナイト」は「URU」を象徴する石とも言えるでしょう。




写真のパープルがかったブルーの石がタンザナイト、一番右、ブラックのヒモに付いているのがラフダイアモンドになります。


2013年9月14日土曜日

「SPIGOLA 」 W Monk Strap Shoes


ご注文を承っておりました「SPIGOLA」のWモンクストラップシューズが出来上がってまいりました。


お客様のご注文はオールブラック x ゴールドバックルというクラシックなスタイル。コンサルティング業の要職として世界中を飛び渡っていらっしゃる御注文主様の足元を飾るに相応しい、シックで控えめな1足です。ビジネスシーンではパテックフィリップのYGケースの時計を合わせられる事が多い為、それに合わせたバックルのセレクトもお洒落です。




トゥはシャープになればなる程、華美なイメージに見えがち。お仕事柄あくまで黒子に徹する事が求められる為、適度なボリューム感を持たせつつ、少しエッジを残したトゥシェイプ。

こちらはキャップトゥですが、お好みによってメダリオンやパーフォレーションをデザインする事ももちろん可能です。



流れるようなストラップのデザインは「SPIGOLA」を代表するデザインの一つと言っても良いでしょう。


ソールもブラック仕上げ。

今回はビジネス用としてのリクエストですが、Wモンクはカジュアルっぽく振ってもかっこよくキマるモデルでもあります。例えば型押しのレザーや揉み革、ステッチには少し太めの白糸を施し、ソールはダイナイトやビブラム等といったアレンジもおススメです。

次回「SPIGOLA」オーダー会の日程は10月下旬を予定しております。






2013年9月11日水曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.31

ここ2週間程にわたって当店で取り扱いのございます生地メーカーをご紹介して参りましたが、本日はイタリアで最も規模の大きなミルである「Canonico」社をご紹介させて頂きます。


毛織物の産地として名高いビエラ地方で1936年に創業しました。
山や丘が多く、豊かで美しい水に恵まれたビエラ地方は、この地理的条件が豊かな繊維産業を育んでいます。
紡績から機織、染色まで自社で一貫しておこなっている大規模なミルであり、その生産量のほとんどはメンズ生地となっております。中でもSuper100's やSuper110'sのプレーンなコレクションは、世界中のアパレルメーカーが幅広く採用しており、ベストセラーとなっています。
特徴はしなやかで光沢があり、着ていることを感じさせない軽い着心地とソフトなフィット感。
そしてリーズナブルな価格帯の生地が豊富な事も「Canonico」の大きな特徴の一つです。

最近では秋冬のフランネル素材に上品な色柄のものが多く、当店でも人気となっています。

2013年9月10日火曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.30

本日はイタリアでも最古参の一社である「Cerruti 1881」社をご紹介致します。

創業はブランド名にも掲げている通り、1881年にまで遡ります。イタリア、ビエラ地方で綿工場としてスタートしたのが始まりです。1957年には紳士服のプレタポルテをスタート、それ以降、香水やシューズ、バッグ等トータルブランドとして今日に至っています。
一つのブランド内で製造から完成品まで仕上げる行程を一貫して行うシステムを作り上げた先駆者的な存在であり、現在のゼニアやロロ・ピアーナの先駆けとも言えます。


そのコレクションの特徴は一貫してモダンさを追求している事。他社メーカーの新しい柄やクオリティに比べ、「Cerruti 1881」は独自の感性を貫いた色柄やクオリティを持ったコレクションを発表し続けています。
角度によって見えるシャドーストライプやドビー柄、一見クラシックなストライプでもメタリックな光沢感であったり、通常は緯糸に使うシルクを縦糸に使用したウールxシルク地であったり・・・
一見普通に見えつつ良く見ると新しく、クラシックを再解釈した生地を生み出しています。
さらに、少量生産のものが多いのですぐに完売し、新しいシーズンごとに新しいコレクションが発表されるところもファンには楽しみな部分でもあります。

生産はオーストラリアから最高基準の原毛のみを厳しい基準から選び、紡績から生地の出荷まで自社工場で一貫して行っています。伝統をベースにしながらも、最新の織機、設備を組み合わせた高い技術で独創的な素材作りを続けており、光沢感となめらかな手触りはクオリティの高さを物語っています。

当店では一通り色々な生地メーカーをお召しになって来られたお客様が、その独創的な色柄に惹かれてお選びになられるケースが多く、そういう意味では非常に玄人受けする生地が多いと言えるかもしれません。





2013年9月9日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.29

本日はイタリアに数あるミルの中でも、最も「エレガンテ」と言っても良いであろう「Carlo Barbera」社をご紹介させて頂きます。

創業者はカルロ・バルベラ氏。彼はオレステ リベルテイという工場のチーフテキスタイルデザイナーとして働いていたのですが、ある日織物工場を経営しないか?という話が持ち込まれました…

その工場は、トスカーナの丘陵地帯、ストローナ川とソッカスカ川という綺麗な川がある小さな村にあり、水や空気、環境に恵まれた、まさに織物には最適な場所でした。

1949年、カルロ・バルベラはこの工場を引き継ぎ、こうして「Carlo Barbera」は誕生しました。

「Carlo Barbera」の生地は、16/18ミクロンという細かさのスーペリアというオーストラリア原産の羊毛と、中国とモンゴル原産のカシミアのみで生産されます。最上のウール原毛を吟味して買い付け、イタリア国内の提携し信頼できる紡績工場のみを使い、丁寧に糸が紡がれていきます。

そうして工場に届いた糸は、糸の緊張を解くために地下の倉庫で寝かせます。「Carlo Barbera」のすごさはこの工程にあります。バルベラ社の糸倉庫は岩を切り出してつくった処にあり、Strona川の水が引き込まれているこの場所は一年中気温が7度、湿度75%に保たれているのです。この地下倉庫で糸は本来の特性を取り戻し、これが”ただの糸”から”カルロ・バルベラの織物”となる工程で最良の結果を引き出す鍵となっています。独特のふっくらとした生地の風合いを出すのにこの工程はなくてはならないモノなのです。

仕上げ工程はこのブログでも何度もお話した様に生地の表情を決定する大切な技術ですが、「Carlo Barbera」の特徴は糸の段階で上記のような工程を経る事で生まれる独自性にあると言えます。

さらにイタリアNo.1の洒落者とも言われる現社長「Luciano Barbera」氏が指揮を執りデザインされた、程よく英国趣味が入った洗練された色柄のコレクションは毎シーズン必見と言えるでしょう。

そしていわゆるカットレングスをしていない点、これも「Carlo Barbera」「Carlo Barbera」たらしめている特徴?かも知れません。イタリアの大手生地メーカーはカットレングス、いわゆる一着分単位の販売網を確立しており、我々もその流通を利用させて頂き生地を手配しています。これに対してバルベラの生地はオフィシャルなカットレングスの販売網がない為、商社や生地卸の問屋がまとまった量で買い付けてきたバルクの中から独自にカットレングスでの販売を行っています。

こうした事情からバルべラの生地は希少性という点も魅力の一つとなっており、私も商社さんや卸問屋さんを巡っては「Carlo Barbera」を探し求めているのです。

因みに近年、「Carlo Barbera」社は「Kiton」グループに買収され、現在では「Kiton」の手掛けるスーツやジャケットの多くの生地は「Carlo Barbera」社製と推測されます。

2013年9月8日日曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.28

さぁ、本日もイタリアの生地メーカーをご紹介!

本日はこれまた有名なマーチャントの一つである「Cacciopolli」(カチョッポリ)をご紹介致します。

フラテッリ・カチョッポリ社はハイクオリティな生地を扱うテーラーマーケット向けのマーチャントとして、ナポリに1920年に創業された、約90年を超える歴史のある会社です。ナポリを中心にイタリア・イギリス・フランスなどのヨーロッパを始めアメリカや日本等、様々な国のテーラーやオーダーショップに生地を供給しています。

特徴はナポリならではの鮮やかで明るい色柄や織柄を多く取り揃えている事。そして、毎シーズンごとにニューコレクションが加わり、常にバリエーション豊かなコレクションが揃っている点です。
また近年のトレンドを反映し、コットンやリネン、ベルベットやコーデュロイ等、非ウール系素材のバリエーション拡充が著しく、お客様の嗜好に合わせた柔軟なセレクションには定評があります。

例えば、アイルランドで織らせた本物のアイリッシュリネンは、とてもコシのある触り心地で、カラーバリエーションが豊富ですし、冬場のコーデュロイではウェイト違いにいくつかのクオリティを揃えており、製作するアイテムやお好みによりカラーとウェイトを細かく選べるほど。
コレクション全体を通して少しカジュアルというかリラックス感のある素材、色柄が多い点がナポリらしく、また「Cacciopolli」らしさでもあります。






2013年9月7日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.27

昨日の「Ariston」社に引き続きましてイタリアの有名マーチャントである「Drapers」をご紹介致します。

「Drapers」社はアルトゥーロ・ローリ氏が1956年にボローニャで創業した生地マーチャント。現在はアルトゥーロの息子であるドメニコ・ローリ氏が社長を務めています。
「Drapers」は自社で企画した生地の製造をミルにオーダーしたり、ミルが持っているコレクションの中からピックアップしたりという形態をとりながら、数シーズンに渡って展開していくレギュラーラインと、シーズン限りで取り扱う「Lolli Suggestins」という2つのラインでコレクションを展開しています。

ちなみに社名は英語で「服地商」を意味する「draper」と、イタリア語で「テーラーのための服地商」という意味の「drapperie per sarti」をかけ合わせたもの。創業はどちらかと言えば新しい部類に入りますが、その高い審美眼、バラエティに富んだバリエーションはKitonやBrioni等のトップメーカーからも高い評価を得ており、世界中で人気を博しています。

その特徴ですが、生地メーカーには珍しく社長であるドメニコ氏が自ら世界中を飛び回り、私達取り扱い店やテーラーを回ってはお客様の声に耳を傾け、要望や意見を随時コレクションに反映されています。特にシーズンバンチである「Lolli Suggestions」はこういった情熱あふれるローリ氏の提案が色濃く感じられ、毎シーズン人気を博しています。

コレクションの大半はイタリアの様々なミルからセレクションされた生地ですが、英国で織らせた生地も取り扱っており、テイストによってミルの使い分けが非常に上手なマーチャントであると言えるでしょう。

おススメの生地ですが、それは何と言っても筆頭は「Lolli Suggestions」に尽きます。
毎シーズン、スーツ生地、ジャケット生地が約30種類程度づつのコレクションですが、上記に述べた通りドメニコ氏の審美眼に叶った選りすぐられたオールスターの様なバンチに仕上がっています。
特にジャケット生地に関してはヴィンテージ柄をモダンなカラートーンに置き換えたり、先シーズンですとフィレンツェの狩猟用のコート地として古くから伝わる「カセンティーノ」を多彩な色バリエーションで展開したりと他のメーカーでは見られない、非常にトレンドを意識し編集されたコレクションと言えます。

2013年9月6日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.26

本日はイタリアのトップマーチャント「Ariston」をご紹介させて頂きます。

1920年にナポリで創業した「Ariston」は、当時ナポリに数百件あったと言われているサルトリア(仕立て工房)に生地を卸すマーチャントとしてスタートしました。その後Kiton , Brioni , Cesare Attolini 等の高級既製服メーカーからも絶大な信頼を得てその事業を拡大していきました。

特徴はいわゆる「Ariston」らしいセンスの良さを感じさせるコレクションに尽きます。
彼らは世界中の上質な生地メーカーのコレクションをシーズン毎にチェックし、自分たちの感性に合うクオリティ、カラー、デザインのものだけを買い付けて「Ariston」の生地ブックを作成しています。
その生地のバラエティの豊富さ、トレンドを巧みに取り揃えた編集能力の高さは他ブランドには真似の出来ない「Ariston」の世界を形成しています。それ故に熱心なファンが多い事もこのブランドの特徴と言えます。

毎シーズン生地ブックが入れ替わる為、定番と言えるクオリティはないのですが、ここ数シーズンの流れで言いますと、Super130'sのウールコレクション。そして75%ウールx25%シルクのスーツ素材のバリエーションが豊富に揃っています。

またウールxライクラのストレッチ素材をコレクションに加え始めているところも、トレンド、マーケットの要望に積極的に応える「Ariston」らしい一面であると言えます。




2013年9月5日木曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.25

昨日に引き続きイタリアの生地メーカーをご紹介させて頂きます。


本日は「Ermenegildo  Zegna」をご紹介致します。

その歴史は古く19世紀後半にまで遡ります。時計製造を営んでいた創業者アンジェロ・ゼニアは、4台の織機を使いウールの生産を始めました。その後、息子であるエルメネジルド・ゼニアがこの工場を引き継ぎ、1910年にビエラ地方のトリヴェロの地でラニフィーチョ エルメネジルド ゼニアを設立しました。

彼は早くから国際的なビジョンを持っていました。
それは、最高級の 天然繊維 を原産国から直接買いつけ、製品と技術の革新を推進し、積極的なブランド戦略を行うというものでした。このビジョンが、完全な垂直統合システムを実現した、世界でも稀有な生地メーカーの土台となりました
彼の国際的ビジョンにより、エルメネジルド ゼニアのファブリックは1938年、 アメリカに輸出されるまでに成長し、 1945年までには40カ国以上で販売されるようになりました。

1960年代後半にはプレタポルテの生産をスタート、1972年にはパターンオーダースーツの展開をスタートする等、彼らの世界観を表現した製品が世界中で展開されていきました。
今日では80を超える国と地域で取り扱われており、「Ermenegildo Zegna」は世界中の人々に愛されています。

生地作りの特徴は「科学と自然」、「クラフツマンシップとテクノロジーの融合」
伝統的な手法の上に革新を重ね、世界で最も新しいテキスタイル作りが行われている先進的な一面を持っています。

原毛の選択から仕上げまで – 生産の全工程はエルメネジルド ゼニアによって行われ、 品質への揺ぎ無いこだわり、 熟練の職人技術を支える科学技術の採用にかけては他の追随を許しません。

軽量化、柔軟性の向上、機能性の進化において先駆的な存在であり、毎シーズンその動向から目が離せないトレンドセッター的な役割も担っています。

おススメの生地はやはり最先端の技術が生かされたクオリティ。最新のパフォーマンスとクラシックな色柄が融合された唯一無二の素材が魅力です。

「Traveller」
「トラベラー」は、 柔軟性と弾力性が極めて高いスーパーファインウールを使用。糸に強い撚りをかけ、さっぱりとした見た目とパリッとした触感を実現しています。 その為極めてシワになりにくく、 通気性にも非常に優れています。移動が多い方や長時間スーツを着用する頻度が高い方などに最適なファブリックです。

「Traveller micronsphere」
表面を常に清潔に保つ蓮の葉の驚くべき撥水特性をヒントに開発されたゼニアらしい素材。 「トラベラー」のファブリックのパフォーマンス特性と柔軟性を損なわずに、汚れに強く撥水性を持った特別な仕上げ技術が施されています。

「Cool Effect」
ゼニアのラインナップ中、最先端のイノベーションである「クールエフェクト」(ウール100%)は、 直射日光の熱から着る人を守る、 初めてのファブリックです。 「クールエフェクト」のエクスクルーシブな仕上げプロセスにより、 濃い色の布地でありながら白色の布地と同じように太陽光を反射します。
その効果は夏の太陽光を80%反射させ、表面温度を10度下げると言われています。

2013年9月4日水曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.24

当店でお取扱いさせて頂いております英国生地を8回に渡ってご紹介させて頂きました。
本日からはイタリアの生地メーカーを数回に渡ってご紹介していきたいと思います。

まずイタリアと言えば・・・ご存知「Loro Piana」社

その歴史は1924年にピエトロ・ロロ・ピアーナがテキスタル会社を創立したのが始まりです。
以降イタリアの伝統的な家族経営を貫き、イタリアのテキスタイル生産の中心地、ピエモンテ州にて原材料の良さを最大限に引き出した生地を生産しています。

「Loro Piana」の一番の特徴は、紡績メーカーから原毛を購入し自社工場で服地を織るというミルの域を超え、糸の原料である繊維の生産から紡績、服地の生産までを全て自社内で行う自社一貫体制のスタイルをとっている事です。
他にもこの業態をとっているメーカーはありますが、他社が大量生産の薄利多売に走る中、「Loro Piana」は一貫して最高級の原料から最高級の製品を作り出す事にこだわり続けているのです。

更に最高級の生地として世界中で評価を確立した後、1980年代に入ると自社ブランドを立ち上げ、アパレルの分野に進出。1993年にニューヨーク、続いてミラノ、ヴェネチアそして東京と、世界の主要都市に次々と直営店をオープンさせています。更に2006年にはインテリア部門へも進出。ライフスタイルをトータルにプロデュースできるラグジュアリーブランドとして他の生地メーカーとは一線を画す存在となっています。。

生地の特徴はまず柔らかな風合いと高貴な艶感。英国生地にはない繊細で女性的な色気とでも言いますでしょうか、思わず触れてみたくなる様な雰囲気を醸し出しています。世界中で生産されているメリノウールSuper100'sの30~40%を「Loro piana」社が買い付けているというエピソードに代表される様に、細番手の生地には特に力を入れています。

中でもお勧めのクオリティは・・・

TASMANIAN
「Loro Piana」の名を一躍世に知らしめたのがタスマニアンウールです。これはオーストラリアのメリノ羊から採れる最高品質のウールの中でも16マイクロン、すなわちSuper150'sの原毛だけを選りすぐったものです。この希少なメリノウールを惜しげもなく使い織られた生地は、オールシーズン対応できる高い吸湿性と持続的な発散作用により水分を大気へ放出することが出来ます。
更に浸透性がよく、いつまでもその生地の高級感を持続させることです。その高級感、風合い、光沢はこの生地だけが持つ唯一無二の存在と言えます。


WISH Super 170's
優れた生地を作る決定的な要素は優れた原料です。
オーストラリアのファインメリノウールの中でも、15マイクロンというとても考えられない細さで織り上げられた原毛から織られたカシミアのような滑らかな手触りが特徴です。1メートル当たり270グラムという軽さも美しいドレープを描き、着心地も軽くシーズンを問わず1年を通して着用出来ます。



2013年9月2日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.23

英国発祥の生地メーカーを色々とご紹介して参りましたが、本日は英国伝統の「カントリーライフ」に特化し、歴史を刻んできたマーチャント「Porter & Harding」をご紹介致します。

1947年にカントリースポーツを愛した2人の人物、ジョン・ポーターとビル・ハーディングによって設立されたカントリー服地専門マーチャント。
英国原産のチェヴィオット種の羊毛を使用したツイード地が特に有名で、それらは創業当時と同じ製法で現在も織り上げられています。
質実剛健でありながら、英国紳士のカントリーライフを彩るスーツ、ジャケット地として、英国本国は勿論のことそんなカントリーライフに共感を持つ世界中の紳士から愛されています。

そのコレクションはカントリースーツやジャケット、ハンティングジャケットやニッカーボッカーズを想定したへヴィな打ち込みに、まさに伝統的な英国柄と言えるチェックやウインドゥペイン、そしてヘリンボーンやバーズアイ等の柄を組み合わせたカントリークラシックなものと言えます。

しかしながら、これらがクラシック=古臭くみえるか?と言うと答えは「ノー」であり、むしろ少しカジュアルで柔らかなスーツ、ジャケットに仕立てれば、いわゆる「アーバンカントリー」な雰囲気、それも本物だけが持つ匂いを持った一着を楽しむ事が出来ます。

その世界観を代表する生地といっても差し支えないのが「Thorn Proof」です。

ハンティングゲームでの着用を想定したツイード服地で、THORN(枝・棘)PROOF(耐える)の名の通り、服地に棘が刺さってもものともしないタフな服地素材です。

ウェイトは390gと560gの2種類が存在しており、これはハンティングのシーズンによってウェイトを使い分ける事が出来るように配慮されているそうです。このヒストリーだけで男心が揺さぶられます!
特に打ち込みの効いた560gの生地は他ブランドには到底コレクション出来ない本物のカントリーツイードと言えます。


「Solway」

「Porter & Harding」の世界観を、メリノウール使いのスーツ地で日常的に楽しめるように発展させたクオリティが「Solway」です。
直径約18ミクロンのファインメリノウールを使用し、よりライトに織り上げることによって3シーズン着用可能な服地となっています。またスーツはもちろんジャケット単品での着用も可能で、様々な着こなしをお愉しみいただけます。

ポーター&ハーディングが誇るカントリーツイードの世界を、メリノウール使いのスーツ地で表現した名作"グロリアス・トウェルフス"を更に発展させたのが、この"ソルウェイ"。直径約18ミクロンのファインメリノウールを使用し、よりライトに織り上げることにより3シーズンの着用を可能としました。また、"グロリアス・トウェルフス"同様にジャケット単品での着用も可能で、様々な着こなしをお愉しみいただけます。

2013年8月31日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.22

本日はまたもや英国の伝統的なミルをご紹介致します。
その名は「Tayler & Lodge」。1883年、英国の一大毛織物産地であるハダースフィールドにて創業しました。

創業以来一貫して、丁寧に時間をかけた高級な服地のみを生産しており、トップクラスのミルとして英国やイタリアのテーラー達の間では非常に評価の高い1社です。

1960年頃まではドブクロス織機という低速で時間と手間を掛けて生地を織り上げて行く古来の織機を使い生産が行われていました。この織機で織ると生地が柔らかく弾力性に富んだ仕上がりになります。ドブクロス織機はそのゆっくりとしたスピードから製品向きではない為、1960年代以降は高速の自動織機に徐々に切り替わっていきました。ただ「Tayler & Lodge」では自動織機を使いながらもそれ以前のクオリティ、風合いに拘るために、スピードを約7割まで落として生地の生産を行っています。

また「Tayler & Lodge」では、工場の近くを流れるホルム川という川の水を使い、出来あがった生地を洗います。この川は軟水で生地を洗う事によって、荒くごわついた生地を柔らかく仕上げています。軟水は羊毛を洗っても柔らかい仕上がりになり、ごわつく事はありません。
仕上げに関してもかなりの拘りを持っており昔ながらのペーパープレス、ロンドンシュランクといった技法を現在も行っています。これらの技法は効率が悪く時間がかかりますが、その仕上がりは生地に独特の艶があり「Taylor & Lodge」ならではの魅力となるのです。


2013年8月27日火曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.21

本日ご紹介させて頂きますのはベルギーのブリュッセルにおいて1938年に創業された世界最大級の生地マーチャントであります「Scabal」社です。

1970年代前半には世界で初めてSuper100'sのスーツ地を世に出し、その後1980年には世界で初めてSuper150'sのスーツ地を生産しています。

自社で織物工場を持たないマーチャントでありながら、イギリスのハダースフィールドにある複数のミル(織物工場)を傘下に持ち、膨大なコレクションを展開しています。中でも歴史が物語る様にSuper100's~200'sまでの細番手ウール、カシミア、シルク、ビキューナといった、いわゆる高級ラインを数多くコレクションしているのが特徴の一つです。

「Scabal」が常にこだわり続けていることは「最高の原材料のみを使用する」ことであり
「原材料のコストは削減しない」こと。
このこだわりが故に、「Scabal」は世界有数の高級紳士服地のサプライヤーとして確固たる地位を築いています。

取り扱う素材はほとんどが英国製で、コットンやリネンなどは比較的イタリア製が多くなっています。
英国製の服地は伝統のペーパープレス仕上げされたスーツ地が多く、独特の鈍い光沢感、ヌメッとしたオイリーな感触を持っています。

そんな「Scabal」のお勧め生地ですが・・・

「Montego Bay」
スキャバル モヘア コレクションの代表作といえるモンテゴベイ。 理想的な弾性と優れたドレープ性、リッチな光沢は他に類を見ない”モヘアの王様”と呼べる服地です。 最高級キッドモヘアの滑らかな手ざわりとSuper100'sウールの素晴らしい着心地をブレンドし、 贅沢の極みを表現したスキャバルの代表作です。

「Champion」
昨シーズンより登場したSuper120s'のコレクションです。英国、ハダースフィールド製で、経糸・横糸ともに2プライヤーンを使用しています。290gと年間を通じて着用できるスーツ地です。光沢があり、適度な耐久性も兼ね備えたデイリーのビジネススーツとして最適な素材に仕上がっております。
全52種類の豊富なデザインも魅力の一つです。

どのクオリティを選んでもバランスが良く、地織のバリエーションが多数揃っているところが「Scabal」らしい一面でもあります。

2013年8月26日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.20

本日は厳密には生地メーカーではないですが、英国を代表する生地の一つ、皆様御存知の「Harris Tweed」をご紹介致します。

生地メーカーではないと書きましたが、では「Harris Tweed」とは何なのか?

歴史は18世紀頃まで遡り、スコットランド北西部に浮かぶハリス&ルイス島で誕生したとされています。島で放牧している羊毛の毛を手紡ぎした糸を用いて、島民が手織り織機で織り上げた伝統的なホームスパン地。それを1909年に現地で発足した「ハリスツイード協会」という団体を通じて販売しているのが「Harris Tweed」と呼ばれている生地になります。いわゆる「Harris Tweed」という登録商標と考えると判りやすいかも知れません。同じような形ですとカリブ海に浮かぶ西インド諸島で紡績された高品質な綿素材を「Sea Island Cotton」として商標登録している事例があります。

この「Harris Tweed」ですが、その品質保証の厳格さは別格であり、その品質基準は何と英国国会の制定法で定められています。生産者はその基準を順守しなければハリスツイードの生産に関わる事が許されません。

・スコットランドのある特定の場所で有機飼料だけで飼育された羊から採れた羊毛であること。
・100% 子羊の新毛だけを扱うこと。
・ハリス&ルイス島で紡績されていること。
・羊毛の選別や織る工程も手作業のみで行われること  etc・・・


こういった厳しい基準を100年以上も守り続ける事で英国ツイードのトップブランドの地位を揺るぎないモノにしているのです。

このストーリー性と質実剛健な素材感、ケンピと呼ばれる独特の白い毛が混じる雰囲気は「Harris Tweed」でしか味わえない特別なモノとなっています。

元来最もライトウェイトなグレードでも480gもあった「Harris Tweed」ですが、現在では400g程度と軽めに織り上げた「スーパーファイン」というクオリティのものが流通の主流であり、気軽に羽織りやすくなった点も人気の一つではないでしょうか。


2013年8月25日日曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.19

昨日は英国で創業し英国生地を扱うマーチャント「Harrions of Edinburgh」をご紹介しました。
本日は同じマーチャントでもイタリアで創業し、主に英国生地を扱うという稀有な存在である「Eurotex」社をご紹介致します。


1864年、ローマで創業した歴史あるマーチャントです。先に述べたようにこの「Eurotex」社、イタリア経営なのですが扱う生地の約85%が英国生地というスタンスが面白いところです。イタリア企画のデザインを英国の提携ミルに織らせたコレクションがメインですので、英国の質実剛健な素材感なのですが、ファンシーな色目や、ヴィンテージ風の仕上げ等にイタリア的な艶っぽさが垣間見えます。

もう一つ嬉しいポイントは品切れが非常に少なく、長期に渡って在庫としてストックし続けている事。例えばスーツを作って2シーズン後にスペアパンツのみ、あるいはベストのみを作るといった事が可能なんです。地味な事ですが、イタリアの生地メーカーは大半が1~2シーズン毎にコレクションを入れ替えてしまう為、こういったアフターの対応が出来ない事も多いのです。

スーツ素材、ジャケット素材のバランスも良く、また近年ではシーズン性の高いコットンやリネン、コーデュロイ等にも力を入れています。


個人的におススメのコレクションは・・・

「Monna Lisa」
85% Wool x 15% cashmereのジャケットバンチです。
英国趣味のガンクラブチェックやウインドゥペイン、ヘリンボーンやハウンドトゥース等の無地っぽいものまでバリエーション豊かな全45色が揃っており、チェックやストライプを構成している色目がイタリアのフィルターを通った絶妙さ。さすが「Eurotex」と唸るコレクションに仕上がっています。

「Kingston」
310gという秋冬に適したウーステッドフランネルのバンチです。
伝統的な英国生地の風合いを持ちながら、クラシックを少しだけアレンジした配色が多くモダンな柄が揃っています。英国メーカーにもイタリアメーカーにもない「Eurotex」らしいセンスを感じさせるコレクションとなっています。

2013年8月24日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.18

本日も引き続き英国の生地をご紹介させて頂きます。本日は英国を代表する老舗マーチャント(生地商)「Harrisons of Edinburgh」です。

マーチャント(生地商)とは生地問屋の事で、基本的に自社工場を持っていません。様々な工場から自社のコレクションに見合うクオリティ、色柄の反物を買い付けたり、工場に発注して織らせたり(いわゆる別注的なイメージ)して、自社のコレクションとして揃えています。

「Harrisons of Edinburgh」はマーチャントとして1863年に創業し、サヴィルロウのテーラーをはじめとする世界中の有名テーラーで必ずといってよいほど取り扱われているブランドです。
「最上級の原毛のみが最高級の服地を作り上げる」という哲学のもと、英国生地らしいしっかりとした打ち込みで織り上げられた生地の数々は、その扱いやすさと仕立て映えの良さ故にテーラーからの評価も大変高いブランドです。
長年取り扱ってきた私の感想は、とにかくハズレの生地がないブランド。細番手でもしっかりとした打ち込みのおかげで仕立て上がりが綺麗ですし、カシミアのコート地のクオリティも素晴らしい。更に他のブランドではもはや作っていない平織りの300gなんていう古き良き英国の香りがする生地を揃えていたり、フランネルバンチには梳毛(Worsted)、紡毛(Woolen)の両方が盛り込まれているなど、服好きの心を揺さぶるマニアックなコレクションというイメージがあります。

そんな「Harrisons of Edinburgh」のお勧め素材は・・・

「Cru Classe」
厳選されたSuper120'sのオーストラリアン・メリノの原毛にカシミアを1%混ぜたスーツ素材。310gという秋冬に最適なウェイトで、しなやかな生地感、上品な艶はこのブランドを代表する王道的なクオリティ。

「Worsted & Woolen Flannel」
打ち込みのしっかりとした英国製のフランネルはこのブランドの真骨頂です。340gのWostedタイプと400gのWoolenタイプがあり、前者は英国気分を気軽に味わえ、後者は昔ながらの英国紳士といったかっちりとしたスタイルが楽しめます。

「Summer cape kid」
南アフリカ産の良質なモヘア、その中でも総生産量の5%にも満たない貴重なサマーキッドモヘアを
60%使用した贅沢な素材です。モヘアならではの光沢感と通気性の良さ、シワになりにくい特性等を兼ね備えながら、硬すぎないソフトな生地感が魅力です。



2013年8月23日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.17

昨日に引き続きまして英国の老舗生地メーカー、本日は「Edwin Woodhouse」をご紹介させて頂きます。


1857年に英国で最も紡績の栄えた町、ハダスフィールドで創業した英国でも屈指のミル(毛織物工場)であり、創業150年を超える老舗であります。

英国の伝統的な手法を守り、クオリティ第一主義を貫きながらもイタリア人のテキスタイルデザイナーを迎え入れるなど、ファッション性にも柔軟な素材開発が行われています。

「Edwin Woodhouse」の生地作りには2つの独自性があります。

1つは原料のクオリティです。通常ミルは紡績工場が生産している糸の中から選び、それをベースに服地を織るのですが、「Edwin Woodhouse」では紡績工場にオリジナルの糸を発注し、その糸をベースに服地を織っているのです。自社の織機、仕上げの工程等に相性の良い素材を作らせる事で、品質を一定に保ち150年以上もの伝統を保っているのです。

もう1つは仕上げの工程です。天然の地下水を使い木製の漕で行う「ウェットフィニッシング」。生地と生地の間に紙を挟み幾重にも重ね、その紙に熱と圧力をかける事で独特の光沢感を出す「ペーパープレス」といった英国伝統の工程を頑なに守り続けています。

個人的には英国の他社メーカーに比べ、少し固めの生地感と鈍い上品な光沢感を備えている生地といった印象を持っています。

代表的な素材ですが、最もおススメなのが1960年代に開発された「AIR WOOL」と呼ばれるフレスコ地に端を発する強撚糸を使ったシリーズです。さらっとしており通気性が良く、シワにもなりにくいこの素材の登場で、「Edwin Woodhouse」の名が世界中に広がることとなったエポックメイキングな素材です。

現在ではこの「AIR WOOL」をベースに混率やウェイトを変える事でバリエーション豊かになっており、様々なシチュエーションでこの伝統的素材を楽しむ事が出来るようになっております。


「AIR WAY」
モヘア混とし、ウェイトを240g まで落とす事で日本の夏場でも着用出来るクオリティとなっています。


「SUMMER COMFORT」
ウール100%でウェイトを240gとしたスーツ素材。「AIR WAY」よりしなやかで豊富な色柄のバリエーションが揃っています。


「SUMMER PANAMA」
上記2つのクオリティが「AIR WOOL」伝統のフレスコ織を踏襲しているのに対し、こちらは通常の平織り素材。Super120'sの細目の原毛を使い、200gという超軽量に仕上げた新しいクオリティです。このブランド得意の強撚糸を用いる事で高番手ながら驚異の耐シワ性、通気性を備えています。


「DIGNITY」
厳選したSuper150'sウール素材にカシミアを2%だけ混ぜるという英国ならではの素材。原毛の良さを引き出すペーパープレスによる鈍い光沢感は格調高い仕上がりに定評があります。ウェイトは260gですので3シーズンお使いいただける最も汎用性の高いウェイトと言えるでしょう。


伝統的な英国調の生地がお好きな方には一番にお勧めしたいメーカーの一つ。特に春夏のスーツ選びには欠かせない存在感のあるメーカーです。

2013年8月22日木曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.16

取り扱いをしております生地メーカーは先日ご紹介させて頂きました通りですが、本日からはメーカーごとの特徴やお勧めのクオリティをご紹介していきたいと思います。

本日は「Dormeuil」について・・・

1842年にジュールズ・ドーメル(Jules Dormeuil)によって創業された創業170周年を誇る世界最古の生地商。

フランスのエスプリ、エレガンスを吹き込み英国の伝統的なファクトリーで織られるコレクションは、創業以来世界の高級服地のトップに君臨し続けています。

その歴史の中で数々の革新的な生地を開発してきた技術力の高さも特筆モノ。
中でも「Sportex」・「Tonic」は登場以来、現在でも独特の魅力があり、服好き達を魅了し続けています。

またウイメンズの生地を手掛けている事も特徴の一つであり、「シャネル」や「イヴ・サンローラン」等のトップメゾンに服地を供給しています。

英国の伝統的なモノ作りを踏襲しながら、革新的な生地、またウイメンズの長れを感じさせるファンシーな色柄、そして妥協なきクオリティへのこだわりが「Dormeuil」の魅力となっています。

スーツ地として現在の主力商品は「AMADEUS」と名付けられたシリーズです。

仕上げの工程で,くし掛けを丹念に施して短い繊維を落とすコームド仕上げを施すことで得た,艶感のある仕上げが特徴のウール100%。280~310g程度のウェイトですので日本では3シーズン、あるいはあまりへヴィでない秋冬生地としてお勧めできる素材となります。
仕立て映えがする腰のある生地、豊富な色柄のバリエーションで全ての方にお勧めできるクオリティです。

もう一つ「Dormeuil」を語るうえではずせないのはやはり「Sportex」そして「Tonic」です。


「Sportex」は1922年に開発された4プライのスポーツ用ジャケット地。耐久性と快適性が当時の上流階級の人々に絶賛され、特にゴルフ用のジャケットとして多くの偉大なゴルファーに愛されてきました。
その独特の生地感からスーツに仕立ててもほのかにスポーティなリラックス感のある雰囲気が漂い、
イタリアのサルトリアでは定番ともいえる生地の一つとなっています。現行の生地は当時よりも軽く(380g)なっており、ヴィンテージの良さと現代の快適性を兼ね備えた素材へと進化しています。

「Tonic」の登場は1957年。現代では当たり前になっているモヘア高混率の服地は、単純なようで高い技術力を必要とし、ドーメル社が「Tonic」を開発するまで実現出来ませんでした。発売と同時に爆発的なセールスを記録し、一躍高級モヘア生地を世に知らしめることになったのでした。
現行品は現代風にアレンジされ、モヘア30%の混率で復刻された「Tonic 2000」。縦糸にウールとモヘアのブレンド糸を使用し、英国製ならではのしっかりとした打ち込みを持ちながら、大幅な軽量化も図られています。春夏シーズンに是非おススメしたい素材の一つです。


このほかにも様々なクオリティの素材がラインナップされており、当店では常時生地バンチを取り揃えております。


2013年8月19日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.15

この2週間に渡ってモデル毎の特徴、お選びいただけるデザイン、そしてオーダーならではの体型補正とご紹介させて頂いてきました。

本日からはオーダーメイドの大きな楽しみの一つ、素材選びに関してを数回に渡ってお話させて頂こうと思います。

オーダーメイドの際、当店でお選び頂ける素材はイギリス、イタリアより厳選したメーカーを取り揃えております。春夏秋冬全て含めますとその数およそ5.000種類!とてもじゃないですが、全ての生地を見て選ぶなんて事は難しく、生地選びの際はまずイメージやご予算、お好み、着用頻度などをお伺いさせて頂いた上で、適宜な素材をご提案させて頂くような流れとなります。

取り扱いの生地メーカーをご紹介しますと

Made in England

Dormeuil
Edwin Woodhouse
Eurotex
Harrisons of Edinburgh
Harris Tweed
John Foster
Lear Browne & Dunsford
Porter & Harding
Savile Clifford
Scabal
Tailor & Lodge

etc...


Made in Italy

Ariston
Cacciopolli
Canonico
Carlo Barbera
Drapers
Ermenegildo Zegna
Fintes
Guabello
Loro Piana

etc...


この他、その時期によって私が探し出してきたデッドストックやスペシャルな素材も取り揃えております。


素材選びで難しいのは、小さな生地ブックで見る生地の色柄から実際のイメージが想像し難い事。
少しでもイメージして頂きやすい様に、約100種類程の生地を1着分の反物としてご用意しております。その反物も参考にしながらお選び頂くのも良いかも知れません。

上記に挙げた生地メーカーはそれぞれ様々なタイプの生地を取り揃えているところがほとんど。
その中から理想の1着を探し出す生地選びはお客様には最も楽しい反面、私的には責任重大な作業でもあります。イメージ通りの生地をお探しすべく、日夜膨大な数の生地ブックと睨めっこしております。

明日は、生地メーカーごとの特徴やおススメのクオリティをご紹介させて頂きます。





2013年8月18日日曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.14

昨日に引き続き、「体型補正」のお話。本日はパンツ編です。

当店で展開している3つのモデル全ては、縦横のサイズをお客様のお体に合わせる事だけではなく、
ジャケットと同様に「体型補正」まで可能となっています。

では昨日と同様、箇条書きにてご説明させて頂きます。


1、出尻・平尻
パターンに対してお尻が出っ張っている場合、尻ぐりが食い込んだり、腰回りのフロントが左右に引っ張られ、シワがでる原因となります。反対にお尻が余っている場合、ヒップはもちろんワタリ~ヒザあたりに斜めにシワがでる原因となります。出ている場合も余っている場合もパターンに対して調整する量を見極め、ヒップの長さ調整を行う事で補正します。


2、下腹
お腹周りがすっきりと見えるように、ウエスト~ヒップにかけての前身のバランスを調整します。その際に股上と連動した補正を行う事で、スマートで動きやすいシルエットとなります。


3、送り腰
横から見た際に、腰が前に突き出たような体型。尻ぐりの食い込み、ヒップ下のシワの具合を見ながら、補正量を決めていきます。


4、センタークリース
センタークリース(プレス線)が体型によって外側に開いたり内側に入り込んだりするのを補正します。
サイズゲージをお召し頂いた状態で補正量をお決めします。


5、O脚
ひざからふくらはぎの外側にかけて引っ張られ、股下部分内側にシワが入る事があります。サイズゲージをお召し頂いた状態で、センタークリースの補正と合わせながら細かなパターン補正を行います。


以上の5箇所を採寸時に細かくチェックし、「体型補正」を加えていく事で、フィット感が良くシルエットが綺麗、そして着心地の良いパンツが生まれます。

2013年8月17日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.13

昨日に引き続いて本日も「体型補正」についての詳細をお話していこうと思います。

今日はジャケット編です。
当店で展開している6つのモデル全ては、縦横のサイズをお客様のお体に合わせる事だけではなく、
昨日お話した「体型補正」まで可能となっています。

これを文章でご説明するのはなかなか難しいのですが、箇条書きに補正可能な箇所を挙げていく事にします。


1、なで肩・いかり肩
なで肩ですと背中の肩甲骨下やバスト脇下にタスキ状のシワが出やすくなります。いかり肩ですと、首の後ろに横ジワ、ラペルの浮き等が生じやすくなります。その方の体つきを見極め、必要量の補正を行います。


2、肩下がり
左右の肩は水平でない方がほとんどです。そのままですとボタンを掛けた時に斜めにシワが入り、背中一面にも微妙なシワが生じます。左右の差を見極め、肩の高さを揃える補正を行います。


3、前肩
人間の体を真上から見ると、肩の先に向かうに従って前にカーブしています。(ハンガーをイメージして頂くとわかりやすいかと思います。)そのカーブとジャケットの設計上のカーブとのズレを補正します。


4、肩甲骨周り
スポーツをされている方に多いのが左右の肩甲骨の出っ張りです。そのままですと背中に横シワが出ますし、左右の出具合が違う事が多い為、片側だけ生地が余って見えたりします。左右の出具合を見極め、出っ張り分の余裕をパターンで補正します。


5、バスト・ウエスト
バストからウエスト回りの肉付きは人それぞれ異なります。例えばお腹側に肉の付いた人と背中側に肉の付いた人では、同じヌード寸法でも前身と後身のバランスを変える必要があります。そのバランスを見極め、前後のパターンの補正を行います。


6、鳩胸
ボディビル体型の方に多く、フロントバストのボリュームの為、ラペルが開き気味になります。ラペルの長さ調整、場合によってはラペル裏でダーツを取る等して、ラペルが収まるように補正します。


7、屈身・反身
横から見た際に猫背気味(屈身)の方はフロントカットが外側に広がりやすく、後ろ丈が跳ね気味になります。また背幅や肩周りの前側のゆとり、首の後ろのフィッティングに注意する必要があります。反対に直立気味(反身)の方はフロントカットが重なりやすく、前丈が跳ね気味になります。バストや肩周りの後ろ側のゆとり、首から肩にかけての横方向のシワに注意する必要があります。サイズゲージをお召し頂いた状態で、それぞれの補正量を見極め、パターンの補正を行います。


8、首回り
首の太さによってジャケットの襟周りの大きさが小さ過ぎたり大き過ぎたりする事があります。小さ過ぎると上襟周りにシワが入ったり着用感が窮屈になります。大き過ぎると首の後ろが浮き上がったり着用感が重く感じます。サイズゲージをお召し頂いた状態で首回りのフィッティングを見極め、上襟の長さを補正します。


9、腕振り
横から見た時の腕を下ろした姿勢も人それぞれ違います。ジャケットの設計上の角度と合っていないと前、後ろにシワが生じます。ジャケットのアームの角度、太さを微調整して真っ直ぐに落ちるように補正します。


以上の9箇所を採寸時に細かくチェックし、「体型補正」を加えていく事で、フィット感が良くシルエットが綺麗、そして着心地の良いジャケットが生まれます。

明日はパンツの「体型補正」に関してご紹介させて頂きます。

2013年8月16日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.12

一昨日、昨日とディテール、言わばオーダーならではの選べるデザインの話をご紹介させて頂きました。

本日はこれもオーダーメイドならではの大きなアドバンテージである「体型補正」のお話をさせて頂きたいと思います。モデル別の細かな補正可能箇所などのご紹介は明日以降としまして、今日は「体型補正」についての私の考え方をご説明させて頂こうと思います。


オーダーメイドの良さって色々あると思います。例えば、「好きな生地が選べる」・「好みのデザインで作れる」・「体型に合わせて作れる」はたまた「出来上がるまでが楽しみ」何ていう方もいらっしゃると思います。そんな中で個人的にはオーダーメイドの最も良い点は「体型に合わせて作れる」という事に尽きると考えています。

この「体型に合わせて」という捉え方ですが・・・ジャケットで言うと着丈や肩幅、ウエストサイズ等、パンツならお尻周りや長さが自分にぴったりと合っている事が「体型に合っている」と思う方もいらっしゃるかも知れません。確かにオーダーメイドですから各部の大きさ、長さ等がぴったり仕上がっているだけで満足感を得られても間違いではありません。

ただ、私が考える「体型に合わせて作れる」というのは上記とは少し次元が違います。

わかりやすい例を挙げてみましょう・・・

身長が同じ、肩幅、3サイズが同じ、体重が同じ二人の男性がいるとします。巷によくあるパターンオーダーの店なら恐らくこの二人のジャケットの着丈と肩幅、ウエストサイズは同じサイズで仕上げるでしょう。そしてそれを着た二人は体にフィットしていると思うはずです。

それはヌード寸に対しておおよそのゆとり量が予め決まっており、その通りの寸法で仕上げるだけの所謂パターンオーダーだからです。こうした縦横の寸法合わせだけで「オーダーメイドです」と看板を掲げているところは星の数ほどありますが・・・

私がこの二人のジャケットを作るとなれば、上がり寸法はもしかすると同じ箇所が出てくるかも知れませんが、肉付きの違いや、姿勢の違いを加味しますので、必然的にバランスの違ったジャケットになります。

人間の体は全て曲線で出来ており、その肉付きは千差万別、更に左右対称ではないので、左右のバランスもお客様一人一人によって全て違ってきます。更になで肩やいかり肩、猫背や反身、肩甲骨やお尻の出っ張り方etc.その方の体型のクセを見抜き、前後左右のバランスを細かく調整していく事が非常に重要な作業となるのです。

簡単に申しますと、採寸時にチェックした体型のクセをパターン上で修正していき(この作業を「体型補正」と言います)、その修正されたパターンを使ってパーツ毎にカットし、その後縫製に移ります。

私の中でオーダーメイドの良さ「体型に合わせて作れる」という意味は、このような「体型補正」が出来る事が大前提だと考えています。

では明日からはロゼストオーダーメイドスーツの「体型補正」についてご紹介させて頂きます。

2013年8月15日木曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.11

先日はジャケットのディテールに関してご紹介をさせて頂きましたので、本日はパンツについての
モデル毎のディテールをご紹介させて頂こうと思います。


まず、「Uno」「Due」の2つのパターンに関しては同じ工房にて製作している為、ご自由に選択可能なディテールの箇所はどちらも同じとなります。「Tre」に関しては別の工房となる為、選択可能なディテールが若干異なる部分がございます。それを踏まえて以下、詳細にご紹介をさせて頂きます。


デザインに関しまして・・・


①タック・・・3モデルともにノータック、ワンタックよりお選び頂けます。ただしタックはアウトプリーツのみとなります。

②サイドポケット・・・縦ポケット・斜めポケット・Lポケット(3モデル共通)
                        デニム型ポケット(Uno・Dueのみ)

③バックポケット・・・左右のフラップの有無、ボタンの有無(3モデル共通)

④ベルトループ・・・任意で本数指定が可能、ベルトレススタイルも可能(3モデル共通)

⑤フロントの持ち出し・・・任意で長さ、先端のデザインの指定が可能(3モデル共通)

⑥ベルト帯後ろのV切り・・・有無の選択が可能(Uno・Dueのみ)

⑦フロントのベルトピンループ・・・有無の選択が可能(Uno・Dueのみ)

⑧ボタンフロント・・・「Uno」「Due」のみ選択可能。「Tre」はジップフロントのみ

⑨パンチェリーナ・・・「Uno」「Due」のみ選択可能。

⑩裾仕上げ・・・シングル・シングルモーニング・ダブル・ダブルモーニング(3モデル共通)


仕様に関しまして・・・


①ライニング・・・ハーフライニング・フルライニング(3モデル共通)

②各ポケットの深さ・・・標準より±3 cmの範囲で深さの調整が可能(Uno・Dueのみ)

③ベルト帯の高さ(ベルト巾)・・・30 mm ・ 35 mm ・ 40 mm より選択可能(各モデル共通)


シルエットに関しまして・・・

①ワタリ幅~スソ幅・・・全てパターン寸法から±3 cm(半寸)以内で自由に設定可能 (3モデル共通)

②股上・・・パターン寸法から±3 cm以内で自由に設定可能(Tre)
       パターン寸法から±3 cm以内で前後別に自由に設定可能(Uno・Due)


以上がご指定頂く標準的なディテールの項目となります。

それ以外の細かなデザイン、ディテールのお好みは出来るだけご希望を反映させて頂きますので
お気軽にご相談頂ければと思います。

また、体型に合わせた各部のアジャストメントに関しましては後日「補正事項」の回で詳しくご紹介をさせて頂きたいと思います。



   


            


2013年8月12日月曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.10

昨日まではパターンオーダー時にベースとしてお選び頂けるジャケット・パンツについてをモデル毎にご紹介してまいりました。

本日はジャケットに関して、ご自由にお選び頂けるディテールをご紹介させて頂きます。



まずジャケットの顔とも言うべき襟に関しまして・・・

①襟幅・・・ベースサイズより ±1.0 cm の範囲で調整が可能です。

②ゴージ位置・・・ベースサイズより ± 1.0 cm の範囲で上下に調整が可能です。(Avernus・Albanoのみ)

③ステッチ・・・シングルステッチ・ダブルステッチ(それぞれ襟端からの位置も指定が可能)

④襟型・・・ノッチドラペル・ピークドラペル・フィッシュマウスラペル



胸ポケットに関しまして・・・

①箱切り・バルカ・パッチポケットより選択可能



腰ポケットに関しまして・・・

①水平ポケット / スラントポケット(それぞれ+チェンジポケットも可)・パッチポケット

②フラップの有無(パッチポケット+フラップも可)

③ステッチ・・・シングルステッチ・ダブルステッチ(それぞれ襟端からの位置も指定が可能)



内ポケットに関しまして・・・

①ペンポケット・シガレットポケットの有無

②ネクタイポケットの有無(Comoのみ)

③ポケットの蓋の有無



ベントに関しまして・・・

①サイドベンツ・センターベント・フックベント・ノーベントより選択可能



ボタンバランス、フロントカットに関しまして・・・

①ボタンバランスの位置指定、2ボタン⇒3ボタン、3ボタン⇒2ボタンへの変更(Avernus・Albano・Garda・Comoのみ可能)

②フロントカットのパターン変更(Avernus・Albano・Garda・Comoのみ可能)



ボタンに関しまして・・・

①水牛ボタン約20種類、コロッツオボタン約30種類、シェルボタン数種類より自由に選択可能。


裏地に関しまして・・・

①無地、柄物合わせまして約200種類より自由に選択可能。



袖口に関しまして・・・

①袖ボタンの数は自由に設定可能。

②本開き(アップチャージなし)・本切羽・切羽なし(それぞれボタン同士の間隔も指定可能)



以上がご指定頂く標準的なディテールの項目となります。

それ以外の細かなデザイン、ディテールのお好みは出来るだけご希望を反映させて頂きますので
お気軽にご相談頂ければと思います。









2013年8月11日日曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.9

本日ご紹介致しますのは、モデル「Tre」


「Uno」「Due」に比較してテーパードの強いシルエットとなっており、プリーツ数の違いによって、股上~ヒップ~ヒザにかけてのサイジングが大きく違ってくるパターンとなっています。

サイズスペック

「Tre One pleats」46 size

ウエスト   80 cm
ヒップ    105.5 cm
ワタリ  34 cm
ヒザ   24.4 cm
スソ   20.9 cm
股上   26 cm

「Tre No pleats」46 size

ウエスト 80 cm
ヒップ  102.5 cm
ワタリ  33.2 cm
ヒザ   23.9 cm
スソ   20.9 cm
股上   24 cm

このモデルもシルエットはお好みに合わせてアジャストが可能ですが、体型補正は「Uno」「Due」程細かく対応が出来ません。フィッティング的に問題がなければその分オーダー価格がリーズナブルなのがこのモデルの利点でもありまして、価格を抑え目にしたい単品パンツのご注文では一番人気のあるベースパターンとなっています。

ポケット周りのデザインやステッチ、ベルトレスへの対応など、お好みのデザイン、シルエットを承る事はこの「Tre」でも十分に可能ですので、履き心地のお好みやご予算に合わせてお選びになられるケースが大半です。

明日はジャケットのお話に戻り、オーダー時にお好みでお選び頂ける様々なデザイン、仕様をご紹介させて頂きます。



2013年8月10日土曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.8

昨日に引き続きパンツについてご紹介させていただこうと思います。

本日ご紹介するのはモデル「Due」です。

「Uno」がどちらかと言えば恰幅の良い方に適したパターンとなっていたのに対し、このモデルは細身の方に的を絞ったパターンと言えます。

シルエットは今のトレンドを程よく取り入れ、すっきりとシャープな見え方にこだわりました。
股上は「Uno」より少し浅くしローライズとなった分、ウエストサイズを少し大き目に設定。
ヒップ~ワタリは運動量を考えゆとりを持たせながら、少し高めに設定されたヒザ位置~スソにかけては細身となっています。

サイズスペック

「Due One pleats」46 size

ウエスト   84 cm
ヒップ    103.5 cm
ワタリ  34 cm
ヒザ   23 cm
スソ   20 cm
股上   24 cm

「Due No pleats」46 size

ウエスト 84 cm
ヒップ  102.5 cm
ワタリ  33.8 cm
ヒザ   23 cm
スソ   20 cm
股上   24 cm

上記をご覧頂ければお判りの通り「Uno」と同様、プリーツの有無に関わらず、ヒザからスソにかけての太さ、股上は同じサイズになっており、1プリーツはノープリーツに比べヒップからワタリにかけての余裕を取ったサイズとなっています。

また「Uno」と同様にシルエットだけではなく、体型補正にもかなり柔軟に対応できる点もこの2モデルの特徴の一つとなっております。

「Uno」と「Due」、似て非なるこの2つのモデル。是非店頭で履き比べて頂ければモデル毎の違いがお判りいただけるかと思います。




2013年8月9日金曜日

ロゼストオーダーメイドスーツ Vol.7

前回まではジャケットについて各モデルのご紹介をさせていただきましたが、本日からはパンツについて詳しくご紹介させていただこうと思います。

パンツのモデルですが、まず大きく3つのモデルに分類されます。

「Uno」
「Due」
「Tre」

この3つのモデルそれぞれにノープリーツ、ワンプリーツがございますので、計6種類のモデルが存在します。ただしジャケットのモデル毎に組み合わせの出来るモデルが下記のように決まっておりますので、その中よりお選び頂く形となります。

「Avernus」「Alvano」「Uno」「Due」
「Garda」「Como」「Tre」
「Orta」「Lugano」⇒ジャケット専用モデルですがセットアップという形でスーツにも対応が可能。
その際には「Uno」「Due」「Tre」の全てよりお選び頂けます。

本日はまずモデル「Uno」についてご紹介をさせて頂こうと思います。

このモデルは当店のお客様に多い40代~50代の体型を考慮し、やや股上が深めでヒップ周り、尻ぐりにゆとりを持たせています。

シルエットは今のトレンドからすると少しゆとりのあるパターンとなっており、どちらかと言えば痩せている方よりは恰幅の良い方に向けたサイジングと言えます。

サイズスペック

「Uno One pleats」46 size

ウエスト   82 cm
ヒップ    104 cm
ワタリ  33.4 cm
ヒザ   24 cm
スソ   21.4 cm
股上   24.4 cm

「Uno No pleats」46 size

ウエスト 82 cm
ヒップ  100 cm
ワタリ  32.7 cm
ヒザ   24 cm
スソ   21.4 cm
股上   24.4 cm

上記をご覧頂ければお判りの通り、プリーツの有無に関わらず、ヒザからスソにかけての太さ、股上は同じサイズになっており、1プリーツはノープリーツに比べヒップからワタリにかけての余裕を取ったサイズとなっています。

もちろんパターンオーダーですからシルエットはお好みに合わせてアジャストが可能。シルエットだけではなく、股上の深さ(前後別)や尻ぐりの出し詰め、センタークリースの逃げ等、体型補正にもかなり柔軟に対応できる点もこのモデルの特徴の一つとなっております。

デザイン面に関して・・・

ポケット⇒縦・斜め・L・ジーンズ型
ウエスト⇒ベルトループ付・ベルトレス
フロント⇒ジップフロント・ボタンフロント・パンチェリーナ

他、ベルトピンループの有無、後ろポケットのボタンの有無etc・・・
かなり細かな部分までお好みを反映したオーダーを承る事が可能となっております。

明日はこの「Uno」を基本としながらも、よりトレンドを加味した細身のモデル「Due」をご紹介させて頂きます。









2013年8月6日火曜日

ロゼストパターンオーダースーツ Vol.6

本日は6つめのモデルにして最も新しく誕生したモデル「Albano」(アルバーノ)をご紹介させて頂きます。


このモデルはここ数年のメンズスーツのトレンド、すなわち短めの着丈、狭めの肩幅、小さく高い位置に設けられたアームホール&細身のアーム、シャープなラインのゴージ周りetc・・・を程よくバランスさせ、ロゼスト流に再解釈した渾身のパターン。


肩パッド、副資材を程よく入れる事で、スッキリと直線的なショルダーラインを形作っていますが、肩先から首の付け根にかけてのノボリが強く出るパターンとする事で、私の好きななで肩気味のラインが出ています。

胸周りはバスト周りのヴォリューム感を重視し
たパターンとなっており、バストから少し高めに設定したウエストポイントまでグラマラスに絞り込まれたシェイプを見せています。

肩周りのスッキリとしたラインとヴォリュームあるバスト~絞り込まれた高めのウエストシェイプによより、視覚的にジャケットのバランスが顔に近くなり、すっきりとスタイル良く見せる効果があります。

イメージ的には「Avernus」の肩周りをすっきりと構築的にし、各部を少しタイト目にリファインした
モダンクラシックな雰囲気の漂うスタイルとでも言えますでしょうか。

ラペルのカッティングも直線的、ゴージラインは高めでかなり起こし気味となっており、「Avernus」では少しカーヴさせていた上襟のラインも「Albano」ではすっきりと直線的なラインで構成しております。


首回りのフィッティングには特にこだわり、写真のように美しいノボリを描く立体的なパターンとなっています。



6回に渡りロゼストオリジナルスーツの6つのモデルをご紹介させて頂きました。

次回からはジャケットと対になる「パンツ」についてモデル毎にご紹介させて頂こうと考えております。



2013年8月5日月曜日

ロゼストパターンオーダースーツ Vol.5

昨日の「Orta」に引き続き、本日もジャケット専用モデルをご紹介させて頂きます。

ロゼストの6つのモデルのうち、最も軽く柔らかなモデル「Lugano」(ルガーノ)です。


このモデルはシャツジャケットに位置づけられるコンストラクションとなっています。すなわち芯地はもちろん、肩パッドや副資材を全く使わず、表地とライニングのみで構築されたシャツと同じ構造を取っています。そのため他のモデルに較べはるかに軽く、折りたたんで携行できる程の柔らかなジャケットになっています。

ここまで芯地等を使わない縫製は今の流行とも言えますが、既製品では体型にフィットしていない部分はシワやたるみ等になりやすくなかなか綺麗なシルエットで着こなす事が難しくなります。
しかしながらこの「Lugano」はもちろん様々なサイズ調整や体型補正が可能ですので、お体にピッタリ合う1着をお作りする事が可能です。

フロントはシングル2ボタンですが、お好みで3ボタンで承る事も可能です。

肩線を後ろに振る事で前から見た際の余分なシワを防ぐ事ができ、芯地なし、肩パッドなしながら、綺麗なショルダーラインを実現しています。

ウール素材との相性はもちろん悪くありませんが、このモデルのコンストラクションを活かすには、夏場ならザックリとしたリネン系、あるいはシャツ地のような薄手のコットン。冬場でしたらツイードや紡毛系の少しヴォリューミーな素材感を持ったものがおススメです。

肩~肩甲骨にかけてと袖のみライニングがついていますので、着用時に生地が引っかかって動きが妨げられる事もなく、快適な着心地をもたらせてくれます。

「Orta」がビジネスシーンまでカバー出来るカッチリ感と備えているのに対して、この「Lugano」はオフシーンやリゾートでその雰囲気を味わって頂きたいモデルと言えます。

明日はロゼスト6モデルの中で最も新しく加わった「Albano」(アルバーノ)をご紹介させて頂きます。



2013年8月4日日曜日

ロゼストパターンオーダースーツ vol.4

本日はジャケット専用のモデルとして開発したモデル「Orta」をご紹介致します。


この「Orta」は年々カジュアル化が進むジャケット市場に合わすべく企画したトレンド性の強いモデル。

サイジングはかなりタイトな設定で、肩幅は他のどのモデルよりも狭め。袖幅も細く、着丈も今のトレンドを踏まえた短めに仕上げています。


短めの着丈に合わせ、フロントボタンのバランスをやや高めにし、スタイリッシュに見せています。


ジャケット専用のモデルという事で柔らかな仕立てにこだわりました。肩パッドはもちろん胸周りの芯地も排し、軽くナチュラルな着心地を実現。柔かな雰囲気を損ねないよう、袖付けは肩の下に袖山を差し込む製法を取り入れています。


フロントラペルは少し丸みを帯びたカッティングとする事で柔らかな曲線を描いています。


ゴージ位置はかなり高めにし、短めの着丈、高めのボタン位置とのバランスと相まって、スタイリッシュでスポーティなシルエットを構築。


アームホールは高めの位置に付けられ、アーム自体も細身で腕の形状に合わせ繊細なカーヴを描いています。「Avernus」ではスーツスタイルをエレガントに見せる為、肘から袖先に向かって少しフレアしたカーヴですが、この「Orta」では肘から袖先までテーパードした形状となっており、ジャケットのスポーティな雰囲気を損なわないカッティングとなっています。

カジュアルなジャケットスタイルには最も相応しいモデルがこの「Orta」
是非店頭でサンプルをご覧くださいませ。



2013年8月3日土曜日

ロゼストパターンオーダースーツ Vol.3

本日ご紹介致しますモデルは「Como」


クールビズに代表される現代のカジュアル化したビジネスシーンや、ゴルフ、リゾートでのジャケットスタイル等、少しリラックスしたシチュエーションを想定して作ったパターンです。


一番の特徴は、肩パッドは勿論、芯地や副資材を極力排したコンストラクションとする事で、素材の風合いを活かした仕上がりとなる事です。特別な柔らかい芯地、そして大見返しと呼ばれる裏地を排した仕立てにこだわって柔かさを追求致しました。

その為、コットンやリネンといった夏素材との相性が良く、また冬場はカシミアと組み合わせる事で柔らかな風合いを引き出し、軽い着心地を生み出します。


袖付けはマニカ・カミーチャと呼ばれるカジュアルなスタイルとしており、ノーネクタイのスーツ、ジャケットスタイルに相応しいエレガントカジュアルな雰囲気を盛り立てます。

このモデル特有のディテールとしてネクタイポケットがございます。


タイドアップの必要がなくなった際、またタイドアップの必要があるかも知れないといった微妙なオケージョンの際、4つ折りにしたネクタイをこのポケットにスルッと収納できるようになっています。



上部のループを折りたたんだネクタイに引っ掛けることで、ネクタイがポケットの下に落ちず、すっきりと目立たなく携行する事ができる仕掛けになっております。もちろん必要のない場合は最初からこのポケットを省略してご注文を承る事も可能でございます。


ラペル周りやポケット周りのステッチは他のモデルに比べてほんの少し目立つピッチ、強めに配しています。これも少しだけカジュアルな雰囲気に見せる為の細かなディテールですが、リネンやコットン素材には非常に効果のある仕上げです。

襟幅は全モデル中、一番太めにデザインされています(サイズ46で9.5cm巾)。カジュアルな中にも大人っぽさ、落ち着いた雰囲気を出すために、敢えてこのバランスに設定致しました。

シングル3ボタンで、ウエストシェイプは少し緩めのDROP 6 に設定してあります。

通常のスーツより少しだけリラックスした雰囲気のスーツをお探しの方、オフタイムのジャケットに最適なパターンです。

2013年8月2日金曜日

ロゼストパターンオーダースーツ Vol.2

昨日に引き続いてオリジナルモデルのご紹介をさせて頂きます。

シャープなラインが特徴の「Garda」(ガルダ)というモデルです。


このモデルは昨日ご紹介させていただいた「Avernus」との差別化を明確にしたもので、すっきりとシャープなシルエットを目指して作られたパターンになります。

「Avernus」がどちらかと言えば南イタリアの丸みの強い服を目指して形作られたのに対して、この「Garda」はミラノスタイルに代表される北イタリアのクラシックに影響を受けて形作られました。



特徴的な一つは適度に肩パッドや副資材を入れ形成されたシャープなショルダーラインと、綺麗にコンケープさせた袖付け部分。特に細めの体型の方や、なで肩気味の方が着ると姿勢が良く見え、がっちりとした風格のある肩~バスト周りの雰囲気を醸し出します。


そしてゴージの位置をかなり高めに設定し、上襟のラインも直線的にデザインしている為、モダンで都会的な雰囲気が出ると同時に、見た目のバランスがやや高くなる事で、すっきりとしたシルエットが強調されています。

バストからウエストにかけてのシェイプはDROP 8 に設定しており、ボリューム感のある肩、バスト周りからウエストにかけての美しいシェイプは「Garda」も特徴の一つです。


フロントはシングルの2ボタン。昨今2ボタンのモデルは襟幅がかなり細目のスーツが多いですが、このモデルではあくまで大人っぽさを追求し、46サイズで襟幅8.7cmと細すぎないサイズに設定しております。

「Avernus」では肘から先を微妙なカーブラインとしていた袖ですが、この「Garda」では一般的な袖のラインとしています。ボディ全体の雰囲気との調和を考えた細かなデザインの仕様違いは私どものオリジナルならではの拘りでもあります。

このモデルはそのシャープなシルエット故、スーツをご注文の際に選ばれる事が大半です。ジャケットにはより適したモデルもご用意しております。明日はカジュアルな雰囲気のスーツ、ジャケットを想定して作ったモデル「Como」をご紹介させて頂きます。


2013年8月1日木曜日

ロゼストパターンオーダースーツVol.1

ロゼスト白金本店のオープン当初より取り扱いしておりますオリジナルスーツのパターンオーダー。
オープン時は1つのモデルしか御座いませんでしたが、今では6つのモデルよりお好みでお選びいただけるまでにバリエーションが広がりました。

そこで今月は今一度当店のパターンオーダースーツを詳細にご紹介していきたいと思います。

①モデル毎の特徴
②採寸に関して
③補正に関して
④取り扱い生地に関して
⑤ディテールに関して

大まかに上記の5つのパートに分け、徹底的にご紹介していきますので是非宜しくお願い致します。

本日は①モデル毎の特徴の第1回目として、累計で最も多く選ばれている人気モデル「Avernus」(アヴェルナス)をご紹介致します。



このモデルは私が数多く袖を通してきた南イタリアのスーツメーカー数社を徹底的に研究し、軽さと着心地の良さを追求し作り上げた渾身のパターンです。


個人的にはジャケットを着た時、なで肩に見える方がかっこよく男の色っぽさが出るという考えですので、肩周りは最小限の芯地のみを配し、肩から首にかけての「ノボリ」が強く出るように設定したモデルです。


したがって袖付けも差し込み袖とし、そこにほんの少しだけ副資材を入れカッチリと見せる事でカジュアルに見え過ぎないように配慮しています。

芯地は柔らかさを出すためにもちろん本バス芯仕立てなのですが、特殊な形に成形したものを使い、肩パッドの役割の一部を持たせる事で、着心地の軽さ、柔らかさが更に際立っています。


ジャケットの顔ともいうべきゴージ位置は過度に高すぎない位置に設定し、そこから伸びる上襟のラインも少し曲線をつけ、エレガントな雰囲気に仕上げています。
フロントはオーソドックスなバランスのシングル3ボタンです。


上襟にも言える事ですが、このモデルは「丸み」「曲線」を出す事にこだわったモデルでもあり、例えば袖のパターンは、肘先で一度絞られ袖口にかけて微妙に広がって微妙な曲線を描いています。

実際にサイズサンプルを羽織ったお客様は皆様まず第一声に「軽い」とおっしゃられる事が多く、その軽さとクラシックで落ち着いた雰囲気からこのモデルをご指定頂くケースが多々ございます。

明日はシャープなラインと若々しいバランスのシングル2ボタンモデル「Garda」をご紹介致します。